水処理を行う上で、最も基本的な水質の指標となるのがpHです。ここでは、その必要性や処理薬品、注意点などについて見ていきます。
pH調節の必要性
pH調節は、酸またはアルカリを加えて水のpHを任意の値に調節することで、その目的は、放流基準や使用先の基準内に収めるためのみでなく、水処理工程において、水中の有害物質の除去に適したpH域にするために行われます。
なお、pHを中性にすることを中和といいます。
よく使われる酸・アルカリ剤
[酸]
硫酸:H2SO4
安価で、反応速度が速く、溶解度が大、揮発性が小さいことから最も使用される酸です。しかし、カルシウム濃度が高い水に使用すると石膏(CaSO4)が沈殿し装置に付着してしまうため注意が必要です。
塩酸:HCl
反応速度は速いものの、硫酸よりも高価で、揮発性が大きいため使用されるケースは多くありません。しかし、水中にカルシウムがあっても、生成する塩化カルシウム(CaCl2)は溶解度が大きく沈殿しません。
二酸化炭素:CO2
比較的安全で、pHを下げすぎる心配もありませんが、ボイラなどの排ガス中に含まれる二酸化炭素を利用する場合は、水の温度上昇に注意する必要があります。
[アルカリ]
苛性ソーダ(水酸化ナトリウム):NaOH
溶解度、反応速度ともに大きく、最も使用されているアルカリですが、比較的高価です。
消石灰(水酸化カルシウム):Ca(OH)2
溶解度が小さく、通常はスラリー状にして使用されるため、攪拌機付きの注入装置を必要とします。また、安価なものの反応速度が遅く、水中に硫酸がある場合、石膏(CaSO4)を生成してしまいます。
ソーダ灰(炭酸ナトリウム):Na2CO3
溶解度、反応速度ともに大きいものの、苛性ソーダよりもアルカリ性は弱く、また、炭酸ガスの発生に伴う微細な泡によって沈殿を妨害することがあるため注意が必要です。