清澄ろ過は、一般的にろ材に砂を用いるため、砂ろ過と呼ばれます。(以下、砂ろ過と呼びます。)ここでは、砂ろ過の目的や仕組みを見ていきます。
主な役割は仕上げ
沈降分離や浮上分離といった、重力式分離方法では除去しきれなかった微量の懸濁物質を除去し水質の向上を図るのが砂ろ過の主な役割です。
砂以外のろ材も使われる
主なろ材は砂ですが、その他にもアンスラサイト(無煙炭)やガーネット(ザクロ石)も用いられます。
構造によって様々な種類がある
ひと言に砂ろ過と言っても、通水方法や層の数などによって様々な種類があり、設置場所やメンテナンス性といった使用者のニーズによって最適なろ過機が選択されます。以下でその代表的なものをご紹介します。
通水方法別の種類
・重力式砂ろ過機:ろ過機の入口と出口の落差を利用してろ過するものです。保守や管理が容易で、上水道で多く採用されています。しかし、ろ過圧力を得るためには落差を大きくする必要があり、構造物の高さが高くなってしまいます。
・圧力式砂ろ過機:密閉構造になっており、ポンプの圧力で水をろ過するものです。ろ過圧力を得るにはポンプの圧力を大きくすることで達成されます。しかし、内圧がかかるため、本体には引張強さの大きい材料(鋼板など)を使う必要があります。また、形状は円筒形が多く使われています。
ろ材の層数別の種類
・単層:ろ材が1種類のものです。
・多層:ろ材が複数組み合わされたものです。密度の異なるろ材を組み合わせることで、ろ材を洗浄しても理想的なろ層の状態を維持されやすくなります。最も多い組み合わせは、アンスラサイトと砂の2層です。
通水方向別の種類
・下向流:水が上から下に向かって通水(ろ過)されるもので、最も一般的に用いられる方式です。
・上向流:水が下から上に向かって通水(ろ過)されるものです。通常(下向流)のろ過では、ろ材を洗浄するたびに、ろ過機内のろ層上部に細かい粒子の層ができ易く、ここに集中して懸濁物質がたまってしまい、洗浄回数が増え効率的ではありません。そこで、通水方向を下から上とし、ろ材を動きにくくしたのが上向流です。しかし、通水の際に一定の流量を超えると、ろ材が流動化してしまうため注意が必要です。
・上下向流:水が上下から中央の集水管に向かって通水(ろ過)されるものです。多層ろ過と上向流ろ過の良いとこ取りをした方法で、下向流はアンスラサイトを通って砂層上部を経て集水管へ、上向流は砂層下部から集水管と、いずれも粗いろ材から細かいろ材の順で通水します。また、上向流によるろ材の流動化は下向流によって抑えられています。
薬品注入方法別の種類
・マイクロフロック法:凝集剤を注入・撹拌し、あえて微小なフロックを作り、凝集と同じ作用でろ材に捕捉されることを狙った方法です。フロックの強度を大きくする目的で、ろ層に流入する直前に高分子凝集剤を注入することが多くあります。
・薬注ろ過法:ろ過の直前で凝集剤を注入し、マイクロフロック法と同様に凝集作用でろ材に捕捉されることを狙った方法です。凝集剤注入後、ろ層に到達するまでの時間に最適値があり、それは水温によって調節が必要で、冬季で約60秒、夏季で5秒程度と言われています。この方法はマイクロフロックよりも凝集剤の注入量が少なく、また、高分子凝集剤の使用が必要ありません。
どの方法も基本的なメカニズムは同じ
先に紹介したいずれの方法も、圧力や通水方法が異なるのみで、基本的なメカニズムは同じです。
ろ過機内に送られた水がろ材を通る際、懸濁物質がろ材間の空隙に捕捉・抑留されます。ここでは機械的なふるい分け作用の他に、凝集作用によろものが大きいと考えられています。したがって、コロイド粒子は凝集性がないため、そのままでは砂ろ過ではほとんど除去することができません。
ろ材の洗浄
ろ過を続けていると、ろ材に補足された懸濁物質が増加し、ろ過抵抗が増大していきます。そのまま使用し続けると、ろ過性能が低下していまうため、設定されたろ過抵抗に達すると、ろ過をやめて洗浄操作に入ります。
洗浄には、洗浄水を逆流させる逆流洗浄(逆洗)、ろ層の表面を洗浄する表面洗浄、そして空気を送り込む空気洗浄があります。
洗浄が不十分だと、長い期間を経てマッドボール(異物に濁質が付着したもの)が生成しやすくなります。