懸濁物質を沈めて分離する沈降分離とは逆に浮かせて分離する方法を浮上分離といいます。ここではその仕組みや装置について見ていきます。
原理的には沈降分離と同じ
浮上と沈降は逆の意味合いですが、浮上分離と沈降分離どちらの方法も水との比重の違いを利用しており、原理的には同じと言えます。
たとえば、水中の油分は置いておくだけで浮上してきます。このように水中の懸濁物質の比重が水より小さければ水面に浮くことになり、浮上させて分離することが可能です。
比重が大きくても浮かせられる?
比重が水よりも大きな懸濁物質であっても、その比重差が非常に小さい場合、微細な空気の泡を水中に発生させ、懸濁物質とくっつけることで見かけの比重が小さくなり、浮上分離させることができます。
この方法は事前に加圧空気を水に溶解したのち、大気圧に解放するため、加圧浮上分離法と呼ばれています。
装置例
1)油水分離装置
代表的なものにAPIオイルセパレータがあります。
これは、沈降分離で使われる横流式沈殿槽と同様の原理を用いたもので、自然に浮いてきた油分は機械でかき取る仕組みになっており、油分を回収するかき寄せ機が付いています。
このように重力を利用して分離する方法では、乳化した油や比重が1.0g/c㎥に近い懸濁質などは分離できず、傾斜板を用いて分離効率を改善したものでも処理水中には10mg/L程度残ってしまいます。そのため、さらに分離を行うためには、オイルセパレータの後に凝集沈殿や砂ろ過などの処理が必要となります。
API:American Petroleum Institute
2)加圧浮上分離装置
除去したい懸濁物質に微細な空気の泡を付着し、見かけの比重を小さくして分離するものです。この方法においても、浮かせた懸濁物質は機械でかき取る仕組みになっており、回収するかき寄せ機が付いています。
この方法は凝集フロックが加圧水と接触する際の衝撃で崩れてしまうので、沈降分離と比べて処理水の水質が低下してしまう欠点をもっています。しかし、一方では、沈降分離だと1~2時間の滞留時間が必要なのに対し、15~30分程度で良いという利点ももっています。
浮上分離が使われる業種
浮上分離は、水より比重の小さい油分や細かな粒子などを含む排水処理に多く用いられます。したがって、浮上分離がよく採用される業種としては、石油精製や自動車、機械加工などの油を含んだ排水を処理する場合のほか、製紙工場からの排水にも採用されています。