名前は知っているけれど、ホウ素が具体的にどのような場面で使われているかピンとこない方も多いのではないでしょうか。
ホウ素は単体で使われることは少なく、ホウ砂やホウ酸の状態で使用されることが殆どです。
ホウ砂は、身近なところではガラスの原料として使われます。ホウ素を含んだガラスは熱膨張率が小さく、熱による変形が少ないため、耐熱ガラスとしてコーヒーメーカーなどのガラスや実験で使うビーカー・フラスコなどで多く使用されています。その他、防腐剤や研磨剤などにも用いられています。
一方のホウ酸は、ホウ酸団子で名前を知っている方が多いのではないでしょうか。その他、目の洗浄剤・うがい薬・鼻スプレーなどの医薬品にも用いられています。
人や環境への影響
成人の致死量は5~10g程度と言われており、口からホウ酸が入ると、おう吐や下痢、発熱、痙攣、皮膚粘膜障害などを起こすほか、長期間の摂取によって、皮膚乾燥や食欲不振、貧血などを起こします。
一方、ごく少量であれば、単体ホウ素・酸化ホウ素・ホウ酸・ホウ酸塩及び多くの有機ホウ素化合物は、人及び動物に対しては食塩と同程度に無毒と言われています。
また、ゴキブリ駆除にホウ酸団子を用いるように、昆虫に対しては(動物に対するよりも)毒性が強いと言われています。
植物にとっては、ホウ素は細胞壁の維持に必要となる重要な栄養素で、土壌中のホウ素が少ないと、成長に悪影響を及ぼしてしまいます。しかし、一方で土壌中のホウ素が1ppmを超えてしまうと、葉の先端の壊死など、過剰摂取による悪影響も与えていまいます。
ホウ素を含んだ排水の処理方法
ホウ素を含んだ排水は、凝集沈殿法及び吸着法(イオン交換法)によって処理されます。
1)凝集沈殿法
アルミニウム塩と水酸化カルシウムの併用が最も効果的です。(その他はあまり除去効果がないと言われています。)
pH9.0以上の高pH域でアルミン酸カルシウムが生成し、そこにホウ素が吸着されることで除去します。
この方法によって、残留ホウ素を10mg/L以下に低減できる一方で、多量のスラッジが発生してしまうため、大容量の脱水機が必要となります。
2)吸着法
ホウ素選択吸着樹脂(N-メチルグルカミン形イオン交換樹脂)が最も実用的と言われており、樹脂再生は硫酸で行い、水酸化ナトリウムでOH形として使用します。
この方法によって、ホウ素を1mg/L以下に低減できます。
しかし、このイオン交換で発生した再生廃液は凝集沈殿による処理が好ましく、通常、前述した凝集沈殿法と組み合わせて用いられます。
ホウ素の処理フロー例
ホウ素の水質基準等
排水基準(水質汚濁防止法;ホウ素及びその化合物)
海域以外の公共用水域に排出されるもの:10mg/L
海域に排出されるもの:230mg/L
水道水質基準(水道法; ホウ素及びその化合物 )
水道水:1.0mg/L
[参考]海水中のホウ素濃度:約5.0mg/L
淡水中のホウ素濃度:約0.2mg/L