As(ヒ素)とは?|水質項目

日常生活をおくる上ではあまり馴染みがなく、漠然と恐いイメージを持たれている方が多いのではと思います。ヒ素は薬品製造や半導体製造、ガラス製造などで用いられ、これらの工場からの排水にはヒ素が含まれている事があり、放流される前には適切な処理が必要です。

人体への影響

単体のヒ素ならびにヒ素化合物のほとんどが人体に対して有害です。誤って飲み込んでしまった場合、急性症状として吐き気や嘔吐、腹痛などを起こし、場合によってはショック症状により死に至ります。また、慢性症状としては、皮膚炎、色素沈着、黄疸、腎不全などを引き起こします。

ヒ素含有排水の処理方法

ヒ素排水の処理方法としては、大きく以下の共沈法と吸着法がありますが、主には共沈法が用いられます。

1)共沈法

ヒ素は重金属と難溶性塩を生成します。共沈法はこの現象を利用して処理するもので、共沈剤としては鉄(Ⅲ)塩が最も効果的です。なお、共沈に最適なpHは4~5ですが、鉄(Ⅲ)塩を過剰に添加することで、pH3~7に広げる事ができます。

また、共沈処理には、3価のヒ素(Ⅲ)よりも5価のヒ素(Ⅴ)のほうが容易なため、 3価のヒ素(Ⅲ)を5価のヒ素(Ⅴ)に酸化してから処理を行う場合があります。酸化剤には次亜塩素酸ナトリウムやオゾン、過酸化水素などが用いられます。

2)吸着法

ヒ素処理向けのキレート樹脂を用いて、ヒ素を吸着処理します。セリウム系キレート樹脂はヒ素(Ⅲ)のほうがヒ素(Ⅴ)よりも吸着量が多いため、共沈処理の場合に有効だった酸化処理は不要です。また、N-メチルグルカミン形のキレート樹脂はヒ素(Ⅲ)では弱アルカリ性、ヒ素(Ⅴ)では弱酸性で有効となる吸着特性があります。

しかし、共存物の影響を受けるため、事前に試験が必要であり、また、キレート樹脂が高額なため、低濃度排水や処理水の高度処理としての適用が一般的です。

その他、活性炭や活性アルミナ、酸性白土、赤泥などが検討された例もありますが、吸着量が少ないため、実用化されている例は多くありません。

排水基準

水質汚濁防止法:0.1mg/L

水道法:0.01mg/L

[参考] 海水:約0.0015mg/L

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