虫歯を防ぐ効果があり、ハミガキ剤の成分として馴染みのあるフッ素ですが、過剰に摂取すると骨や歯のフッ素症など、人体に悪影響を及ぼすものでもあります。
工業用途では、フッ素は半導体製造やガラス加工などで使用され、これらの工場排水に多く含まれるため、放流される前に適切な処理をする必要があります。
フッ素を含んだ排水の処理方法
排水に含まれるフッ素は水酸化カルシウム(消石灰)や塩化カルシウムなどを使ってフッ化カルシウムとして分離処理するのが一般的で、排水中のフッ素濃度に応じて大きく次の2つの方法があります。
1)フッ化カルシウム沈殿法
排水に水酸化カルシウムまたは塩化カルシウムを添加し、フッ化カルシウムを生成させて処理する方法です。しかし、生成したフッ化カルシウムはコロイド状で沈降しにくく、フッ素濃度10mg/L以下にすることが困難なため、さらに、硫酸アルミニウムを添加し、水酸化アルミニウムを生成させ、フッ化物イオンと一緒に沈降(共沈)させて処理します。これにより、フッ素濃度を一桁mg/Lまで処理する事が可能となります。
なお、水酸化アルミニウムが沈降しやすい様、pHを6.0~8.0に調整する必要があります。
2)フッ化カルシウム二段沈殿法
主にフッ素濃度が100mg/L以上の高濃度の排水に用いられる方法で、一段目で排水に水酸化カルシウムまたは塩化カルシウムを添加、フッ化カルシウムを生成させたあと、フッ化カルシウムを沈殿させ、さらに二段目で上部に残ったフッ素イオンに対し、硫酸アルミニウムを添加することで、共沈・除去する方法です。なお、フッ素とアルミニウムの化合物は水に溶けてしまうため、硫酸アルミニウムを多め(フッ素に対して重量比で2倍程度)に添加することで、フッ素の除去率を向上させることができます。
なお、実際の排水には、二酸化炭素やリン酸イオンなど、カルシウムと反応しやすい物質も含まれている場合が多く、実際に処理した場合には、これらがカルシウムを消費してしまい、フッ素濃度が下がりにくい場合があるので注意が必要です。
二段沈殿法の処理フロー
フッ素の水質基準等
排水基準(水質汚濁防止法;フッ素及びその化合物)
海域以外の公共用水域に排出されるもの:8mg/L
海域に排出されるもの:15mg/L
水道水質基準(水道法; フッ素及びその化合物 )
水道水:0.8mg/L
[参考]海水中のフッ素濃度:約1.4mg/L
淡水中のフッ素濃度:約0.2mg/L
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