窒素、リンと富栄養化
窒素とリンは富栄養化の指標として用いられます。
富栄養化とは、瀬戸内海や湖などの閉鎖性水域において、植物プランクトンの増殖を促す栄養塩が増加する現象のことをいいます。
本来、窒素とリンは生物の生育には欠かせない栄養素ですが、閉鎖性水域などに多量に蓄積された場合、植物プランクトンの増殖により、アオコや赤潮が発生し、悪臭や漁業に影響が出てしまうおそれがあります。
T-N(全窒素)とは
窒素は生活排水をはじめ、農業や工場から出てくる排水、自然界からなど、様々な場所から流入します。
大きく有機性窒素と 無機性窒素に分けられ、有機性窒素はタンパク質中やアミノ酸中のものを、無機性窒素はアンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素のことをいい、これら全てを合わせたものを全窒素(Total Nitrogen, T-N)といいます。
T-P(全リン)とは
リンは体内では核酸、ATP(アデノシン三リン酸)などとして存在しており、私たちにとって必要不可欠な元素のひとつです。
生活排水、工場排水、農業排水など、人間の活動に伴うあらゆる排水中に含まれており、水中の溶存成分としては、大きくオルトリン酸塩、ポリリン酸塩、有機リン酸塩の3種類が存在し、懸濁成分としては土壌などへ付着、含有したもの、バクテリアやプランクトンの構成成分として存在し、これら全てを合わせたものを全リン(Total Phosphorus, T-P)といいます。
ただ規制すれば良いわけではない
瀬戸内海などの閉鎖性海域では、富栄養化による赤潮やアオコの発生を抑制するため窒素やリンの濃度だけでなく、総量が規制されています。しかし、近年一部の内湾などでは栄養不足により、水産資源の生育に影響が見られており、やみくもに規制を強化するのではなく、水域を細分化し、そのエリアに合わせた柔軟な対応が必要であること分かってきました。