「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(以下、フロン排出抑制法)」が改正され、令和2年4月1日に施行されました。
しかし、この法律によって実際に何をしたら良いのかはピンとこない人も多いのではないでしょうか。
ここでは、フロンを使用している機器の管理者(会社等)として何が必要なのか、その概要をまとめています。
(なお、ここに記載している情報は2020年11月時点のもので、法律は随時変更される可能性があります。)
Ⅰ.該非判定
まず、このフロン排出抑制法に基づいた対応が必要なのかどうかを知る必要があります。それは「第一種特定製品」を所有しているかどうかになります。
この第一種特定製品を所有している場合、その管理者(会社等)は法に定められた方法で管理する必要があります。
1.第一種特定製品とは
次のa~dの4つ全ての項目にあてはまる機器が第一種特定製品に該当します。
a)エアコンディショナーまたは冷蔵機器もしくは冷凍機器(冷蔵・冷凍機能を有する自動販売機を含む)
b)業務用の機器
c)冷媒としてフロンが充填されているもの
d)第二種特定製品に該当しない
ちなみに、機器の銘板(ラベル)にも第一種特定製品に該当する事が記載されている場合があります。
なお、第二種特定製品や家庭用の機器は回収の義務がないわけではなく、それぞれ自動車リサイクル法や家電リサイクル法でその対応が定められています。
2.管理者とは
管理者とは、機器の所有者のことを指し、特定の個人ではなく法人を指します。
ただし、契約書でこの責務を負う者が指定されている場合は、その者が管理者となります。
Ⅱ.管理者が取り組まなければならない措置
第一種特定製品の管理者は以下のa~gの7つの措置に取り組まなくてはなりません。
a)適切な場所への設置
b)簡易点検
c)定期点検
d)修理しないままの充填の原則禁止
e)漏えい量の算定、報告
f)廃棄時のフロン類の引渡し
g)記録・保存
a)適切な場所への設置
機器の損傷につながるような、振動や湿気の多い場所を避けて設置、もしくは必要な対策を講じておく必要があります。
また、点検や修理が容易に行えるよう、周囲のスペースを確保する必要があります。
そして、これらの設置環境を維持する必要があります。
b)簡易点検
b-1.簡易点検の概要
■対象機器
すべての第一種特定製品に義務付けられています。
■点検頻度
3ヵ月に1回以上
■点検方法
主に目視による外観点検で、振動や腐食、異音などの有無をチェックします。
b-2.簡易点検実施者
点検実施者に具体的な制限はなく、管理者自ら行うことが可能です。
c)定期点検
c-1.定期点検の概要
■対象機器
第一種特定製品のうち、圧縮機の電動機の定格出力が7.5kW以上の機器が対象となります。
※圧縮機が複数ある場合
複数の圧縮機が同じ冷媒配管に接続されている場合は、それらの定格出力を合算して判断します。(よく銘板に「●kW + ●kW」のように記載されています)
■点検頻度(電動機の定格出力によって異なります)
7.5kW以上の冷凍冷蔵機器:1年に1回以上
50kW以上の空調機器:1年に1回以上
7.5kW~50kW未満の空調機器:3年に1回以上
■点検方法
簡易点検と同様の外観点検の他に、直接法や間接法、もしくはこれらを組み合わせて検査を行います。
直接法とは
主に「発泡液法」「漏えい検知器を用いた方式」「蛍光剤法」があります。
間接法とは
チェックシートなどを用い、稼働中の機器の値が正常範囲内に入っているかを確認します。
c-2.定期点検実施者
社内・社外どちらの者でも点検を行うことが可能ですが、「専門点検の方法について十分な知見を有する者」が行うこととされており、例えば、冷媒フロン類取扱技術者・冷凍空調技師などの有資格者や十分な実務経験を有し、点検や修理についての十分な知識を有する者のことを指します。
d)修理しないままの充填の原則禁止
点検などで漏えいが見つかった場合、原因を特定し修理を行わないまま充填を行ってはいけません。
e)漏えい量の算定、報告
第一種フロン類充塡回収業者が発行する充塡証明書・回収証明書に記載される充塡量・回収量から漏えい量を算出し、年度内の漏えい量が1,000t-CO2以上の場合、その旨を報告しなければなりません。
f)廃棄時のフロン類の引渡し
第一種特定製品の廃棄等を実施する際は、フロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引渡すか、フロン類の引渡しを建物解体業者等に委託する必要があります。
なお、漏えいなどによって製品中にフロン類が残っていない場合は、その通りではありません。
g)記録・保存
第一種特定製品の管理者は、簡易点検・定期点検・修理や充填履歴を記録し、機器廃棄後も3年間保存しなければなりません。
必要事項が記載されていれば、様式の指定はなく、紙でも電子でもOKです。
ちなみに、参考様式が環境省のHPに掲載されています。
ここでは、管理者としてどの様な実務が必要なのか分かりにくかった経験から、概要のみをピックアップしました。
フロン排出抑制法の目的から確認したい方は、「改正フロン排出抑制法パンフレット(環境省・経済産業省・国土交通省)」を、管理者の実務を具体的に確認したい方は「第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き(環境省・経済産業省)」を確認してみてください。